• 地盤情報特集

液状化の起こりやすい地盤とは?

2011年12月2日、機械振興会館(東京都港区)にて開催された、
地盤審査補償事業主催の地盤液状化セミナーの概要です。

2012年12月8日

関東学院大学若松教授による、
一般の方でも分かりやすい地盤液状化の基礎知識。

若松先生の授業風景

2011年12月2日、機械振興会館(東京都港区)にて、住品協保証事業(開催当時:現株式会社地盤審査補償事業)主催の地盤液状化セミナーが開催されました。

関東学院大学工学部 社会環境システム学科の若松加寿江教授をお招きし、地盤「液状化」の基礎知識と題して講演を頂きました。
若松教授は、地盤液状化をご専門とされており、日本全国の液状化の履歴を調べ、液状化地盤の分析をしてこられました。その研究成果を基に液状化の起こりやすい土地について解説頂きました。

液状化の起こりやすい土地は、大きく7種類に分けられます。
その7種類は以下のとおりです。

①若い(新しい)埋立地 
②旧河道・旧池沼(川・沼・池があった場所) 
③大河川の沿岸(特に氾濫常襲地) 
④砂丘の裾・砂丘間低地 
⑤砂鉄や砂礫を採掘した跡地の埋め戻し地盤 
⑥沢埋め盛土の造成地 
⑦過去に液状化が起こった土地

 

①若い(新しい)埋立地

2011年の東日本大震災では、千葉県浦安市をはじめとして、最近の50~60年以内に造成された埋立地で著しい液状化被害が見られました。しかし、埋め立て後かなりの期間が経過した埋立地でも液状化が発生することがあるので安心はできません。粘土・シルト分の少ない砂は、埋立て後100年以上経過しても、液状化することがあります。

②旧河道・旧池沼(川・沼・池があった場所)

川は、氾濫などがきっかけとなって流れが何度も変わってきています。また、河川改修で蛇行していた川の流れをまっすぐに変える工事が行われたことで、昔の川が沼地として残っていることがあります。川の昔の流路(旧河道)やかつて沼などがあった所は、地下水位が高く、ゆるい河床砂や埋土が存在し、液状化が最も起こりやすい場所です。川の形や池沼の位置に注目して、旧版地形図と現在の地図を見比べてみましょう。

③大河川の沿岸(特に氾濫常襲地)

大河川の沿岸には、川が運んできた土砂が堆積しています。過去に氾濫が頻繁に起きている地域は、土砂の堆積が盛んな地域で、水はけも悪いので注意が必要です。川の蛇行・屈曲部や合流部は、氾濫が多い地域と見て良いでしょう。現在は流路がまっすぐでも、昔は激しく蛇行していた地域もあり、川の流れの形を明治時代の旧版地図で確認してください。

④砂丘の裾・砂丘間低地

砂丘は、風により運搬された砂が堆積して形成された丘状の地形で、日本海沿岸や、太平洋岸では鹿島灘、遠州灘沿岸などに分布しています。砂丘砂は均等粒径の中砂や細砂で、粒径分布から見て液状化しやすい砂です。砂丘の裾や、砂丘と砂丘の間の低地では地下水位が高いため、極めて液状化を起こしやすい場所です。過去の履歴を見ても、複数回の液状化を起こしている所が多くあります。

⑤砂鉄や砂礫を採掘した跡地の埋め戻し地盤

日本は、世界でも有数の砂鉄の産地であり、1960年代頃まで全国各地で砂鉄の採掘が盛んでした。砂鉄の採掘は露天掘りで、深さ5~10m穴を掘り、砂鉄だけ選別した後、砂を埋め戻して締固めもしなかったため、砂鉄採掘跡地の地盤はきわめて緩い状態となっています。2011年の東日本大震災では、千葉県旭市などで砂鉄の採掘跡地の埋戻し地盤が広範囲に液状化して、約750棟の戸建て住宅が液状化被害を受けました。

⑥沢埋め盛土の造成地

液状化が起こらないと思われがちな丘陵地帯の造成地でも、谷埋め盛土部分で液状化が起きます。谷や沢を埋めた部分は、盛り土の厚さが厚く、地下水の流れもあります。東日本大震災でも、近年造成された14箇所の造成地で噴砂が確認されました。最近の造成地は、谷や沢をうめたところでも、「山」とか「丘」が付く響きの良い地名がつけてられていますが、注意が必要です。

⑦過去に液状化が起こった土地

過去に液状化が起こった土地は締め固まり、再度液状化する危険は少ないという話が聞かれますが、実際には再液状化をする可能性は高いと言えます。これは、液状化時に離ればなれになった砂粒が、液状化後に必ずしも隙間なく密に堆積するわけではないことが理由です。2011年の東日本大震災で初めて液状化した地域も、歴史的に大きな地震を経験していないだけで、今度も同等以上の地震があれば、再液状化を起こす可能性は充分にあります。

若松先生スナップショット

 

若松 加寿江 (ワカマツ カズエ)

関東学院大学工学部社会環境システム学科教授
日本地震工学会副会長
国土交通省平成23年度
土地履歴調査地区調査委員会委員長、
日本地震工学会研究統括委員会委員長

主な著書に「日本の液状化履歴マップ」東京大学出版会