- 地盤保険「The PERFECT 10W」
地盤保険「」の審査基準
他地盤保証会社の判定を確認しながらP10Wの審査基準を詳しく見ていきます。
地盤保険の審査基準について
地盤保険P10Wの物件審査基準は、NPO住宅地盤品質協会が作成している、「住宅地盤の調査・施工に関わる技術基準書2019年第4版」(以下「技術基準書」)をベースにしています。
(※2021年11月現在)
ある地盤判定の事例内容を確認する
それでは実際にある地盤判定の事例を基に、当社の審査基準ではどのような違いがあるのか確認してみましょう。
◾️案件概要
<当該地の基本データ>
建築予定地 | 東京都杉並区高井戸東 |
---|---|
建物概要 | 木造2階建て(木造軸組工法) |
建築面積 | 53.25 m² |
延べ床面積 | 103.67 m² |
基礎種別 | べた基礎 |
擁壁 | 東面1950mmのRC擁壁 |
<当該地のSWS試験データ>※一部のみ記載
◾️ある地盤判定の内容
上記の「案件概要」から他の地盤保証会社が考えた地盤判定・補強事計画は下記のとおりでした。
<地盤判定>
地盤判定 | 補強工事必要 |
---|
<補強工事内容>
工法 | 湿式柱状地盤改良 |
---|---|
改良径 | 直径500mm |
杭長 | 6.5m |
固化剤添加量 | 300kg /m³ |
施工機 | 3t 建柱車(管理装置なし)で実施 |
地盤保険の地盤判断を実際に行う
上記「地盤判定」に対して、当社はどのような地盤判断になるのか、実際の審査の流れを見てみましょう。
◾️地盤保険P10Wの審査手順
地盤保険P10Wの審査は、地盤会社自身が考えた「地盤判断」を審査書式(※)に記載して頂き、システムを通じて提出されたものを審査します。
具体的な手順としては、まず各資料調査(※)を行い、その資料をもとにSWS試験データの確認を行います。それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
※資料調査:地盤調査会社同様、技術基準書のP5〜P13を基準に行います。
01まず「土地条件図・地形治水分類図」を確認
当該地の土地条件図
土地条件図とは?
土地条件図は、防災対策や土地利用・土地保全・地域開発等の計画策定に必要な、土地の自然条件等に関する基礎資料を提供する目的で、昭和30年代から実施している土地条件調査の成果を基に、主に地形分類(山地、台地・段丘、低地、水部、人工地形など)について示したものです。
土地条件図でわかることは?
土地条件図は地形分類(山地、台地・段丘、低地、水部、人工地形など)を確認できます。
地形ごとに色分けされているので、地形図より地形の判別が容易です。
※「土地条件図」は国土地理院の「地理院地図」でも確認することが出来ます。
当該地の土地条件図
治水地形分類図とは?
治水地形分類図は、治水対策を進めることを目的に、国・都道府県が管理する河川の流域のうち主に平野部を対象として、扇状地、自然堤防、旧河道、後背湿地などの詳細な地形分類及び堤防などの河川工作物等を表示している主題図です。
治水地形分類図でわかることは?
治水地形分類図から土地の成り立ちを理解でき、そこから起こりうる水害や地震災害などに対する自然災害リスクを推定することができます。
平成19年度以降順次更新図が公開され、また地形図では読み取りにくい微高地を色分けすることで表しています。
土地条件図・治水地形分類図により、この土地が「人工地形」だということがわかりました。
文字通り人工的に改変されて造成された地形です。
代表的なものに、台地・丘陵地で斜面を切土し、切土で生じた土を谷底低地に盛土して造成を行った土地などがあります。
切土側ではかく乱されていない自然地盤が露出していることや、切り取った土の重量の分だけ荷重が除荷されるために地盤条件が良いとされます。
一方、盛土側では不十分な締固めで残った空隙により圧縮沈下を生じる危険性が高く、必ずしも地盤条件が良いとはされません。
02「簡易地歴レポート」を確認
簡易地歴レポートとは?
アサヒ治水探査株式会社が提供する、地質地盤情報データベース「G-space」より得られる、各年代の航空写真を用いた地歴レポートとなります。
簡易地歴レポートでわかることは?
年代別に土地の改変状況を航空写真で確認することができます。1945年に雑木林だったものが1980年代には造成され宅地に改変されたなど、画像を比較することで土地の変化を確認できます。
簡易地歴レポートを見ると土地が改変された年代を予想することができますので、造成後の経過年数などを推定することに非常に有効です。
当該地の簡易地歴レポート
簡易地歴レポートにより、以下のことがわかりました。
- 以前は神田川の後背湿地と台地の境目であったと推測される。
- 1950年代〜60年代に神田川の整備が行われ、周辺を盛土し、台地部分と傾斜が緩やかになるように人工的に造成されたと思われる。
03「周辺ボーリングデータ」を確認
周辺ボーリングデータとは?
正式名称:標準貫入試験
ボーリング Boring(=くりぬくこと)によって掘削した孔を利用して、1mごとに地盤の硬さを測定する標準貫入試験を行なう調査です。通常は、土のサンプリングと同時に行なわれます。
周辺ボーリングデータでわかることは?
標準貫入試験によってN値(エヌち)というデータを得られます。N値は、地盤の安定性を推定するための目安となる大事なデータです。また、現状の土層の採取が可能なため、土の観察が容易で、物理的な各種土質試験等にも使えます。
SWS試験(スクリューウエイト貫入試験)との大きな違いは、軟弱な地盤から硬質な地盤まであらゆる地層の掘削ができることです。
当該地のボーリングデータ
周辺ボーリングデータにより、以下のことがわかりました。
- 台地部分は関東ローム地盤である。
- 今回の案件の土地は人工地盤上であり、盛土が0.5m~2m程度である。
- 盛土の下部層には腐植土が存在する可能性が高いため、何かしらの対応を実施しないで建物を建築した場合は、長期にわたって建物が沈下してしまう可能性が高い。
04SWS試験データを確認
01〜03で調べた資料調査で判明した敷地条件を念頭に入れながら、実際に地盤調査会社が実施したSWS試験の試験データを確認していきます。
当該地のSWS試験データ(一部のみ記載)
SWS試験とは?
正式名称:スクリューウェイト貫入試験
試験機ロッド先端のスクリューポイントを貫入させる際のウエイトの重さ、ロッドの回転数から換算式を用いて換算N値を求めることができる試験です。
標準貫入試験のように詳細な土質を調べることや硬い層を掘り進めることはできず、最大調査深度は10mまでとされていますが、小規模建築物を建築する際に必要な地盤の固さを求める場合に広く用いられている調査方法です。
SWS試験でわかることは?
● 換算N値の算出
試験結果から、土質別(粘性土・砂質土)mp換算式を用いて換算N値を算出することができます。
換算N値は本来のN値に準じており、N値とは地盤の強さの目安となる値です。
● 土質の判定
スクリューポイントに付着した土、回転時の発生音、抵抗などから土質の大まかな判定ができます。性質が異なる「粘性土」「砂質土」「礫質土」の判別に必要な有力な手掛かりとなります。
地盤保険の審査基準だとどう判断されるのか
◾️地盤保険P10Wの基準で審査内容を確認する
行った資料調査から、ある事例の地盤判定・補強工事計画を当社の基準に合わせると、いくつかの指摘事項が出てきます。
※当社の基準:「技術基準書」に記載されている基準
<補強工事内容>ある地盤判定の事例 | 当社基準から見た指摘事項 | |
---|---|---|
工法 | 湿式柱状地盤改良 | 〇 |
改良径 | 直径500mm | × (改良径が不足している) |
杭長 | 6.5m | 〇 |
固化剤添加量 | 300kg /m³ | 〇 (適正な固化剤であるか確認が必要) |
施工機 | 3t 建柱車(管理装置なし)で実施 | 建柱車△・管理装置なし × |
- 周辺データより腐植土や酸性土が予想されるため、配合試験及びpH測定が必要となる。
- 羽切回数が不明。(450回以上必要なため、詳細記載が必要。)
- 管理装置がないので、2サイクル確認及び掘進・引抜速度の管理ができない。
では今回、どのような補強工事計画であれば、地盤保険P10Wの審査承認されるのでしょうか。
今回の案件でのポイントを記載致します。
どのような補強工事計画ならP10Wで審査承認される?
- 腐植土の存在が疑われるため、事前の土質調査または配合試験を行い、確認した上で、対応可能な材料を使用する場合には施工が可能(=審査承認OK)。
- 施工に万全を期すため、施工機・管理装置・羽切回数等は「技術基準書」記載の基準に準拠する。
※補強工事内容は湿式柱状地盤改良。
※なお、湿式柱状改良以外の工法でも、住品協技術基準を満たした他の工法や、「建築技術性能証明書」が発行され、 The PERFECT10W の認定工法であれば設計・施工が可能です。
その地盤調査、地盤改良工事は誰のため?
以上のように、地盤保険P10Wの物件登録を行う場合は、細かい部分までチェックを行っています。
地盤保険 The PERFECT10W の審査基準は、最善を尽くして建物を絶対に不同沈下させないために、NPO住宅地盤品質協会の「技術基準書」をベースにしています。
地盤保険を活用して
共に地盤トラブルのない豊かな住環境の創造をしましょう!