- 地盤の基礎知識
地盤とは?
地盤の基礎知識を学んでいくスタートとして、
まずは「地盤とは何か」という根本的な問を突き詰めます。
はじめに
地盤は建物と密接な関係にあるにもかかわらず、木材や金具などと異なり、手に触れ、加工を施すことができないために、戸建住宅の設計者や施工者にとってはとらえどころのない分野として認識されてしまい、つい全てを地盤業者任せになりがちです。地盤調査報告書を受け取っても、地盤に関する考察が記載されている結論部分だけを拾い読みするという方も多いのではないでしょうか。
ここでは住宅の地盤について、できるかぎり専門用語を使わずに解説していきたいと思います。文章を読むというよりは図や写真を見ながら、地盤の世界をほんの少しでも身近に感じていただければ幸いです。
地盤とは何か
まずここでは「地盤」という言葉の意味をはっきりさせておきます。
なぜならば、「地盤」という表現は、専門に地盤調査や補強工事の施工に従事している者でもないかぎり、日常会話では登場しない言葉だと思われるからです。まして、これから家を建てようとするお施主様自身も「あそこの地盤は悪いそうだ」などと隣近所の話題にすることはめったにないと思われます。むしろ、「地面」や「土地」、「敷地」といった言葉のほうが生活には溶け込んでいるでしょう。
「地に足をつけて」とはいいますが、「地盤に足をつけて」とはいいません。ある広さの更地を売り買いしようとすれば、そこは「地盤」ではなく「土地」と呼ばれます。
面積や接道の状況、交通の利便性などによって坪単価が決定され、資産として登記されるのは「土地」であり、土地を扱うのは不動産業者です。
ではいったい「地盤」と「土地」とではどこがどう違うのでしょうか?
それは、同じ場所であっても、そこに構造物を建築しようとするときには「土地」ではなく「地盤」と呼称することになります。そもそも地盤に接地せずに建築される構造物などは存在しません。構造物を建築しようとすれば必ず地盤が必要となります。 すなわち、構造物と常にセットで扱われる建築・土木工学的な専門用語が「地盤」であり、何も建てられない更地のままであれば、そこは相変わらず「土地」のままとなります。
つまり、同じ地面であっても、見方によって「土地」になったり「地盤」になったりするのです。
なお、農業土木の世界では作物を植える場所のことを「土地」でも「地盤」でもなく「土壌」と呼びます。
建物と地盤の力くらべ
建物は基礎という部材を介して地盤と接するように建築されます。基礎の接地面(根切底)では建物と地盤が力くらべをしています。上から建物荷重がのしかかり、下では地盤がそれを支えようとしているのです。
正確には接地面だけの攻防ではなく、建物荷重が伝わる範囲の一定の厚みをもった地盤が建物を支えるのですが、地盤に十分な強度があれば、建物は何十年にもわたって建築直後のレベルを維持したまま動かずにとどまり続けます。しかし、かりに地盤が軟弱で建物荷重に負けるようなことがあれば、建物は沈下してしまいます。
地盤は建材である
地盤は自然に形成され、建設現場に行けばはじめからそこにあるものなので、「地盤が建材である」というと違和感があるかもしれません。
「地盤」は工場生産され、建材店から現場に搬入される材料ではありませんが、建物を一番下から支えている物が何かといえば、基礎のさらにその下の地盤であり、建物にとって不可欠の材料が「地盤」です。地盤が建材なのであれば、その機能を十分備えているか、また期待どおりの性能を発揮してくれるか、などを確かめなくてはいけないわけですが、地面を覗き込んだだけでは分かりません。
建物荷重に負けないような丈夫な地盤かどうか一目で分かる品質保証書は存在しませんし、十分な性能を有することを注文して納品される材料ではないだけに、戸建住宅の設計・施工者みずからが確かめるか、地盤調査会社に依頼してしっかりと調べてもらうことが必要になります。